音楽好きなオトナの隠れ家『Bar Music』

Music

生まれも育ちも大人になってもずっと住んでいる渋谷が僕のホームグラウンド。ハロウィンでうんざりした圧倒される人混みや、街頭宣伝やパチンコ屋の騒音、爆音で走るアドトラックなど「Quiet Life」とは程遠い街に見えるが、実は一歩裏に入ると昔から変わらない静かな時間が流れている場所があったり、かつて“渋谷系”なんて呼ばれたジャンルがあったように音楽にまつわるカルチャーが根付いている街でもある。僕はそんな渋谷が大好きだし、渋谷のB-SIDE的な魅力を少しずつでも知ってもらえたらと思う。

というわけでこのカテゴリーで最初に紹介するお店は『Bar Music』。渋谷界隈の音楽好きで知らない人はいないであろうお店だ。公園通りにあった「カフェ・アプレミディ」の店長を10年務めた中村智昭氏が独立して2010年にオープンさせた。

カフェ・アプレミディについて

まずはアプレミディについて少し触れよう。音楽プロデューサー兼編集者として活躍する橋本徹氏をオーナーとするこのカフェはセンスがいいとはこういうことかと教えてくれる空間だった。不揃いに見えるアンティークの家具やソファの絶妙な配置はまるで友人の自宅にでもいるかのようにくつろげるし、そこに心揺さぶるソウルやジャズ、ボサノヴァなどの数々の名曲がBGMとして流れるのだからもう時間を忘れてしまう。アプレミディの登場は僕にとって渋谷の居心地を変えたと言ってもいいほどの衝撃だった。店内のBGMの音楽をそのままを編集した橋本氏監修のコンピレーションアルバムは大ヒットし、カフェミュージックという言葉はこのアプレミディから生まれたのだと思っている。公園通りからファイヤー通りへ移転した今のお店にはなぜか足が遠のいてしまっているのだが。

音楽好きなオトナの隠れ家

そのカフェを10年間店長として仕切っていた中村氏が独立し、同じ渋谷に“Music”というワードを店名に使ったBarを作るというのだから否が応でも期待が高まる。出来あがったのは期待に違わず“いい音楽”との出会いに満ちたオトナの隠れ家といった空間だった。壁一面に中村氏コレクションのアナログ盤やCDが整然と並び、お店の一角にはDJブースやCD・レコードの販売コーナーもある。またメニューと一緒に中村氏お薦めのアルバムのレコメンドが出てくるあたり、このBarの主役は間違いなく“Music”だ。


店内のBGMは中村氏自らが丁寧に選曲し心地よい音量で流れている。「この曲なんですか?」と訊ねればその無尽蔵な音楽知識の引き出しから親切に解説してくれる。お店で流れていた音楽を気に入ればそのまま買って帰ることもできたりする。僕が愛してやまないJose JamesやBenny Singsの音楽とはここで出会った。あと中村氏主宰のレーベル「ムジカノッサ」のコンピレーションアルバムが本当に秀逸なので是非とも聴いてほしい。また中村氏と縁のあるアーティストのライブやDJイベントなんかも定期的に開催されていて、さほど広くない店内だから音楽との距離感含めそれはもう最高に贅沢な時間。

中村屋のコーヒー

僕はお酒が全く飲めないので頼むのはいつもコーヒーなのだが、実は中村氏の広島にある実家は自家焙煎純喫茶「中村屋」、そこから仕入れた豆で手間をかけて淹れたコーヒーは実にコクと深みがある。いつも一緒に注文する自家製チーズケーキもまた美味しい。


渋谷は音楽の街。その喧騒からしばし離れ“いい音楽”に出会いたくなったら、そっと『Bar Music』の扉を開いてみてほしい。