我家で愛用しているイームズの椅子ー『ラウンジチェア』

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家具の中でも椅子が一番好き。なぜだろう。人間が座るという一つの行為に対してこれほどのバリエーションがあるのがとても不思議だし、使う時にはいつも体に密着しているプロダクトだからまるで自分の分身のように特別な愛着が湧くのかもしれない。

あとは椅子次第でその空間の雰囲気が決まるというインテリアの主役としての重要性もある。お気に入りの椅子があればそれだけで居心地のいい場所が完成する。北欧家具に名作と呼ばれる椅子が多いのはその国の人々が長い時間を自宅で過ごすからなのだろう。そんな椅子好きの僕がこつこつと集めてきた愛してやまないイームズの椅子を少しずつご紹介していきたい。

まず最初は1956年に発表されたイームズを代表する名作『ラウンジチェア&オットマン』。映画監督のビリー・ワイルダーへの誕生日プレゼントとして贈られたというエピソードも有名。ただし我が家にあるのは2011年にアジア地域限定で100脚のみ販売された限定仕様のもの。通常モデルとどこが違うかというと、レザーの張地とプライウッドのシェルの部分がすべてブラックで統一されているオールブラック仕様なのだ。当然ながら通常モデルよりもシックでクールな印象がお気に入り。実は2015年からは通常ラインナップでもブラックモデルを選べるようになって稀少価値という点ではちょっと残念ではあるが、現行モデルはUSA製、我家にある限定モデルは日本製ということで張地やクッションの感じがやや異なるらしい。



限定モデルの特典としてエディションナンバー付の黒いアッシュ材の額縁に入ったドローイングが付属していた。1954年までイームズオフィスで働いていたデザイナーのチャールズ・クラッカによるドローイングに、チャールズ&レイを信奉し、イマキュレートハートカレッジで美術を教えていたシスター・コリータによるハンドレタリングの解説文が施されているというコレクターズアイテム。

僕はリビングにいる時間のほとんどをこのラウンジチェアに座って過ごしている。“まるで使い込まれた一塁手のミットのように温かく包み込むようなデザイン”という形容通り、自分の心身がどんな状態であろうとこの椅子はいつも変わらず僕を受け入れ、大きな安心感で優しく包み、時に無言で叱咤激励する。僕はこの大きいミットの中で、本を読み、音楽を聴き、映画を観て、気がつくと眠っている。もはや完全に身体の一部となっていると言ってもいいのかもしれない、いや僕のほうがラウンジチェアの一部となっているのか(笑)。