『ミュージック・ダイアリー』岡本仁

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岡本仁文庫本シリーズの第4弾『ミュージック・ダイアリー』が完成。パピエラボによる装幀、活版印刷の表紙、秀逸なエッセイ、電子書籍では得られない上質な感触、所有することの満足感。

音楽好きなら知らない人はいないであろう鎌倉のカフェ「ヴィヴモン ディモンシュ」のオーナー堀内隆志氏が監修し、2007年3月から毎月1枚ずつ全12枚リリースされたコンピレーションCDのタイトルが『ミュジック・ダイアリー』。コンセプトは「カレンダーをめくるように日常生活に寄り添う音楽」。アルバムのアートワークには岡本氏撮影のポラロイド写真が使用され、それと共に氏による書き下ろしのエッセイが一編ずつ掲載されていた。それらを一冊にまとめたのが今回のリトルプレス。残念ながらこのコンピレーションCDが発売された当時は完全にノーマークで、全部揃えたいと思った時にはすでに廃盤になって久しく、かなりのプレミア価格で諦めたのを覚えている(あとから1枚だけ、5月リリースの「windy」を手に入れたが)。なので今回の『ミュージック・ダイアリー』はまだ読んだことのない岡本氏のエッセイをじっくり楽しめる貴重な機会となった。およそ10年前に書かれた文章は当然だが時の経過に褪せるはずもなく、いつものスタイルで普遍的な心地よさに満ちている。音楽について書いているというよりは、日常や旅先での何気ないエピソードの中にさりげなく音楽を感じさせる瞬間を散りばめている感じがたまらない。音楽への深い愛情、幅広い文脈、鋭い洞察があればこその文章、本当に憧れる。『ミュージック・ダイアリー』を読んだ今、改めてコンピレーションCDの全タイトルを揃えたい衝動に駆られている。うーん、悩ましい、、。


パピエラボ発行の岡本仁文庫本シリーズ No.1〜4