たった3坪のジャズレコードの聖地『JARO』
いまアナログレコードの人気が高まっている。雑誌で特集が組まれ、アナログ盤を最高のシステムで聴かせるこだわりの店が増え、新譜のリリースがCDではなくアナログ盤と配信のみといったケースすらある。かくいう僕も大好きなジャズの名盤を求めてレコードを“掘る”のが至福の時間だ。
1973年にオープンしたジャズレコード専門店の老舗『JARO』。渋谷の東急本店通りとセンター街をつなぐ路地の途中、意識していないと見過ごしてしまいそうな場所にその入り口はある。
扉を開け急な階段を一段ずつゆっくり降りる。階段にも侵食しているレコードの山を崩さないよう慎重に。店の全貌を初めて目の当たりにした人は間違いなく驚くだろう。たった3坪しかない穴倉のような空間とそこを埋め尽くしている8000枚のジャズレコードから感じる圧倒的なエネルギーを。店主柴崎氏のジャズやレコードに関する知識は当然といえば当然だが半端なくスゴい。本当になんでも知っているし出し惜しみなく気さくに答えてくれる。だからずっとジャズ談義をしていたいところだが、基本的に長居は禁物だ。次の客が階段を降りてこようものなら入れ替わるのすら困難なほどの狭さなのだから(笑)。
わかる人にはわかるこのコルトレーンのオリジナル盤の破格の安さ、九万五千円也。うー、ほ、し、い
ちなみにお昼休みはシャッターがクローズ
1982年に登場したCDというメディアがレコードの売上を追い抜いたのが1986年。30年経ってすでにCDすら主流ではなくなり今やダウンロードが当たりまえ。そのようなデジタル化の流れは“音楽を聴く”という行為を手軽だがこだわりのない味気ないものにしてしまった。一方レコードを聴くということは手間と時間、そしていい音で鳴らそうとすればそれなりの投資も必要だ。でもそれが音楽に向き合うということの本来の姿のような気がしてならない。今だからこそアルバムのジャケットを眺めながら最高の音でアナログレコードを聴くという贅沢をじっくりと味わいたい。