新たな定番『BYREDO』の香水

Life

香りによって記憶が呼び起こされることを“プルースト効果”という。五感の中で嗅覚だけが大脳新皮質を介さずに脳と直接つながっているので記憶と結びつきやすいと言われている。

TPOをわきまえてさりげなくまとった香水の香りが自分の印象を良くしたり、相手の記憶に残る役割を果たすこともあるだろう。でも僕が香水に求めるのはまず自分自身がその香りに癒されること、リラックスしたり気持ちを整えてくれる効果だったり。ちょうど家にいる時のアロマキャンドルやルームフレグランスのように。だから自分がつけている香水の匂いをいつもかすかに感じられるものを選ぶ。当然だが周りの人に絶対に不快感を与えないということを意識する。必然的に選択肢は狭まり本質の伴わない流行りのものは外し、本当に上質な良いものだけを見極めることが重要になる。2006年にスウェーデンのストックホルムで誕生し、2011年に日本に上陸したブランド『BYREDO(バレード)』。創設者のベン・ゴーラムは「私の私的かつ濃密な“香りの記憶”が本作をまとう人の別の記憶を呼び覚まし、あるいは新しい記憶となる」と語っている。バレードの香水はいわばベン氏自らの様々な記憶の“プルースト効果”を一つ一つ形にしたものなのだ。僕が選んだのは「GYPSY WATER」というとても柔らかく穏やかな香り。いったい僕の中に潜むどんな記憶を呼び覚まし、これからどんな記憶と結びついていくのだろう。シンプルを極めたボトルデザイン、洗練されたパッケージやロゴタイプ、WEBデザインに至るまでそのミニマルな世界観はまるでアートのように美しい。まだ誕生してまもないバレードの香水が新たな定番になることを僕は疑わない。