平林奈緒美氏のカバンの中身

Art-Design

僕の感性に訴えかけてくるグラフィックデザイン、パッケージデザイン、ショップのロゴやカタログ、本の装幀、雑誌のディレクションなど、カッコイイと思うものは例外なく平林奈緒美氏によるものだ。

とにかく平林奈緒美デザインが好きでたまらない。資生堂在籍時のコスメブランド「FSP(フリーソウルピカデリー)」のデザインは化粧品という枠を超えてクール、ゼロハリの小型アタッシュケースごと送られてきたプロモーション用サンプルには度肝を抜かれた。ソニアパークの著書「SHOPPING MANUAL」のブックデザインと「ARTS&SCIENCE」に共通する洗練された世界観は周知の通り。初めて雑誌のアートディレクションを担当した「GINZA」のディテールに凝った誌面は毎号隅から隅までチェックしたものだ。インテリア雑誌に取り上げられる自宅や事務所の内装へのこだわりは信じられないくらい細部にまで及ぶ。とにかく納得する空間にするために一切の妥協も許さない。そして平林氏本人のファッションスタイルも全くブレがない。基本的には白シャツに黒のパンツ(軍パン好き)にマニッシュな靴。トレードマークの黒縁の眼鏡は「小竹長兵衛作」の廃番モデルを一生分ストック。その一本筋の通ったこだわりは何から何までカッコイイ。女性よりむしろ男性のほうに平林フリークが多いのではとさえ思えてしまう。そんな彼女がいつも持ち歩いているカバンの中身を紹介するという垂涎ものの記事が、UNITED ARROWS発行の「CLOTHING MATTERS」という冊子に載っていた。


モノトーンで統一されたラインナップは予想通り。とにかく一つ一つのアイテムへのこだわりと“らしさ”が半端なく伝わってくる。クロムハーツのシンプルなウォレットやポーチ、ペンケースやキーリングをこんな風に日常使いするカッコよさ。研究に研究を重ねやっと辿り着いたというスマイソンの手帳の上質感。2017年5月渋谷に開業予定の「TRUNK(HOTEL)」のロゴが入った紙製ファイルはこのプロジェクトのアートディレクターを務める平林氏デザインによるものだろう。あと気になるのがハガキやレシートなど紙モノをまとめている透明のリップストップみたいなジッパーポーチ、もちろんダイソーの100均ポーチではなく(笑)たぶん北欧の文具メーカーのものだと思うがものすごく欲しい。徹底してミニマルというわけではなく機能面も追求しつつ厳選された平林流カバンの中身には、一貫した美学と卓越したセンスを感じずにはいられない。改めて自分が日々持ち歩くモノをフィルターにかけようと思ったし、そもそも自分らしさとは?実はまだこれという決め手がなく試行錯誤は続いている。あと今まで縁がなかったけど、クロムハーツやっぱりカッコイイな。

「ku:nel 2008年11.1号」

「GINZA 2017年6月号」※現在愛用中のバーキン