Blue Bottle Coffee 『中目黒カフェ』が発信するもの

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コーヒー界のAppleことブルーボトルコーヒーの快進撃が止まらない。10月にオープンした国内5号店目となる『中目黒カフェ』は新たなスペースを併設した注目スポットだ。

ブルーボトルコーヒー日本上陸1号店から店舗設計を手掛ける長坂常氏率いるスキーマ建築計画は今回も見事な仕事をしている。元々古い工場だった建物をリノベしたそうだが、ブルーボトルのために新たに設計されたようにしか見えない美しい佇まい。所々あえて残されている工場の名残が実にカッコよく内装のアクセントになっている。天井が高く明るく解放的な店内に基本的にはたった8席しかない座席。もちろんスタンディングでコーヒーを飲めるスペースは十分すぎるほどある。ここはいわばMacBookを開いて長時間の作業をするような“ON”の場所ではなく、あくまでも純粋にコーヒーを楽しむための“OFF”の場所なのだ。その日おすすめのドリップコーヒーをサクッと飲んで帰るもよし、最高にリラックスできる空間でゆったりと流れる時間に身を任せるのも気持ちいい。ここはコーヒーというカルチャーを中心に人が集まり、自分のための一杯を丁寧に淹れてくれる素敵なスタッフとのコミュニケーションを楽しみながら、思い思いの自由な時間を過ごせる場所なのだ。そしてこの店舗にはもう一つ重要なテーマがある。半地下に設けられたワークショップスペースではカッピング、テイスティング、ドリッピングなどのイベントが定期的に開催されるほか、中二階には各店舗スタッフの研修やバリスタのトレーニングのための専用スペースもあり「コーヒーを楽しむ人を育てる」ための重要な拠点と位置づけられている。つまりカフェであると同時に人材育成の場所でもあるのだ。元々工場だった場所がブルーボトルの新たな発信源(=ファクトリー)になったというところだろうか。僕はスターバックスのヘビーユーザーでもあるが、ブルーボトルが掲げる「個人の香りがするコーヒーチェーン」というコンセプトにすごく魅かれる。一見アナログな作業に見えて実はあのハンドドリップの技法に最新のテクノロジーが駆使されているという意外性と時代性、カスタマーとスタッフ一人一人の「個」を重視したマニュアル化されていないように感じさせるスタイルの心地よさ、きっとそれがブルーボトルの革新性であり、そうした体験を含めて僕らはコーヒー界のAppleに魅了されるのだろう。

丁寧に一杯ずつハンドドリップ

オリジナルのドリッパー購入

ワークショップスペース

意図的に残された工場のイメージ

最高の笑顔