『月光茶房』で “沈黙の次に美しい音” に癒される
“the most beautiful sound next to silence” これは僕の大好きな音楽レーベルECMが掲げるコンセプト。そのECMの日本における聖地とも言える場所が表参道にある『月光茶房』だ。
とにかく全てにおいて店主原田氏のセンスとこだわりが詰まったL字カウンターのみのミニマルでスタイリッシュな喫茶店。あえて喫茶店と表現したのは美味しいコーヒーと紅茶が飲めてゆっくりと時間を過ごせるから。いわゆるジャズ喫茶のように大音量で音楽が流れる店ではなく、むしろ音楽のボリュームは控えめ。だけど厳選されたLINNをはじめとするオーディオ機材のパフォーマンスが素晴らしく、ものすごくバランスの良い音が店内に響いている。かかる音楽はトラディショナル、クラシカル、アンビエント、エレクトロニカ、ジャズ…そしてもちろん“沈黙の次に美しい音”であるECMの音源も。店主の心地よい選曲に身を任せ、しばし日常の喧騒からトリップする。
ここがなぜECMレーベルの聖地かと言うと、店の隣りに「ビブリオテカ・ムタツミンダ」というライブラリーがあり、そこにECMの音源約1500枚全てが揃っているのだ。2010年に発行された世界初のECMコンプリートガイドの制作にも関わっている原田氏のコレクションだが、月光茶房の客であればなんと見学させてもらえる。ECMファンにとってこれほど貴重な機会はないだろう。来日するECM所属のアーティストもわざわざ訪れるという。僕のiTunesライブラリにもキース・ジャレット、パット・メセニー、ジャック・ディジョネット、カーラ・ブレイなど心酔するアーティストのアルバムはけっこう入っているが、ECM探究の道は果てしなく長く終わりがないと思い知らされる。