『坂本龍一 アナログ・レコード・コンサート』@ワタリウム美術館

Music

ワタリウム美術館にて開催中の「坂本龍一 | 設置音楽展」の関連イベント『坂本龍一 アナログ・レコード・コンサート』に参加することができた。

常に間近で坂本氏の仕事を取材し、坂本氏関連の著書にも多数携わってきた編集者、吉村栄一氏による選曲+トークによって浮き彫りになる偉大な音楽家40年の軌跡。1時間半という限られた時間ではあったが、坂本龍一氏の音楽的変遷、最先端のテクノロジーの活用法、常に時代を象徴する作品の圧倒的なクォリティと多様性、唯一無二の感性と才能、それらを改めて認識させられた充実した内容だった。坂本氏の作品のほとんどはCDやアナログ盤、データ等で持っているが、今回貴重な音源も幾つか披露された。

  • 「非夢の装置 或いは関数としての音楽」1977年(実験的コンサート「個展シリーズ」で発表された初のオリジナル作品)
  • 「東風」1978年(プロモーション用12インチ・ディスコミックス)
  • 「宇宙」1979年(匿名的な立場で制作したドキュメンタリー・レコードのためのオリジナル作品)
  • 「Neo Plant」1986年(劇作家の如月小春デビューシングル)

加えて1979年発表「Discord」や2009年発表「out of noise」、2015年に発売された「Year Book 2005-2014」に収録されている未発表曲などを聴いていくと、それらが最新アルバム「async」へと通じる布石となっていることが明確になり実に興味深かった。

何と言っても、これらの作品をアナログレコードで聴けるという企画が素晴らしい。やはりCDの音では感じることができないそれぞれの作品が生まれた当時の音をリアルに体感できる。そして昔の作品であっても全く古く感じさせないのが坂本龍一の創り出す音の凄さなのだ。今回会場に設置されていたのは、ドイツの「musik electronic geithain」社製の「ME100」というモニタースピーカー。ムジーク社のスピーカーは坂本氏がコンサートにも使用するほど絶対的に信頼している名機だ。最高の音で最高の音楽を堪能する最高に贅沢な時間。改めて今回のイベントのために尽力してくださった吉村栄一氏、ワタリウムのスタッフの方々に感謝したい。