『BlueSongs』KASHIF

Music

2017年はまだ半分以上残っているが、今年のベスト・フェイバリットなアルバムになりそうな予感がするKASHIF(カシーフ)初のソロアルバム『BlueSongs』が素晴らしい。

横浜の音楽クルー「Pan Pacific Playa(PPP)」のメンバーとして10年以上活動し、さらに一十三十一(ヒトミトイ)、スチャダラパー、(((さらうんど))) などの個性豊かなアーティストをギタリストまたソングライターとして支えてきた。僕がKASHIFというギタリスト、ヴォーカリストそしてトラックメイカーの存在を意識し始めたのは、間違いなくシティ・ポップスの歌姫、一十三十一のアルバムへの参加だ。近年のシティ・ポップス・シーンにおける最重要アルバム「CITY DIVE」の多くの楽曲にクレジットされていたのと、「PACIFIC HIGH / ALEUTIAN LOW」に収録されているKASHIF自らが作・編曲した名曲「羽田まで」のクールなヴォーカルが印象に残っていた。十分すぎるほどのキャリアの中で辿り着いた待望のソロアルバムはまさに機が熟したという表現がぴったりの素晴らしい出来栄えだ。テクノっぽい浮遊感のある打ち込みのトラックの上にソウルっぽいヴォーカルやソリッドなギターが乗っかってくるとにかく気持ちいいサウンド、アンビエントな質感の上にソウルっぽい要素が乗る、フューチャーソウルと言ったらいいのか。そこにシティ・ポップスのグルーヴ感も散りばめられていてこれはもうたまらない。一十三十一が3曲に参加、マスタリングが砂原良徳、そしてアルバムタイトルとリンクするジャケットの印象的な肖像画はあの永井博(大瀧詠一「A LONG VACATION」のジャケットがあまりに有名)という贅沢な布陣が盛り立てる。ほかのどのサウンドとも似ていない彼にしか作れないオリジナルな作品をKASHIFはほぼ一人で完成させた。その純度と密度は限りなく青く深く美しい。