最高の本屋『COW BOOKS』

Books

僕は本屋が好きだ。大型店舗から個性溢れる小さな本屋まで気分や目的に応じて使い分ける。なかでもそこに行くということ自体が目的になる特別な本屋がある。2002年中目黒にオープンした『COW BOOKS(カウブックス)』だ。

店主は松浦弥太郎氏

店主の松浦弥太郎氏についてはここで語るまでもないだろう。自慢ではないが氏の著書は全部持っている。最初に彼を知ったのはカウブックスの店主としてだった。そこから一気に傾倒し「松浦弥太郎」は常に気になる存在となり、彼が発信するものはすべて追いかけそこから大いに影響を受け、そしてカウブックスは僕にとって本屋以上の特別な場所となった。


最近出会った本

カウブックスでなければ出会えなかったであろう本がたくさんある。最近購入したのは伊丹十三の「ヨーロッパ退屈日記」。随筆をエッセイに変えたと評されるあまりにも有名な本で復刻版や文庫本はいつでも買えるのだが、昔に出版されたものが欲しくてずっと探してた。「伊丹一三」名義の第一版はとうてい無理だが、オリジナルの増刷されたものを手に入れた。伊丹十三といえば映画監督としての名声くらいしか知らなかった僕はこのエッセイを読んで、才能豊かな彼がすべてにおいて抜群にセンスよく類まれな審美眼の持ち主であり、その知性溢れるユーモアに富んだ軽快な文章はとても50年前に書かれたとは思えない躍動感をもって迫ってくることに感動するのである。ちなみに表紙のイラストや中の挿絵も全部本人が描いている。「本書を読まずしてエッセイを語るなかれ」はまさに真実だ。


イームズのスツール

松浦弥太郎氏の著書「日々の100」に載っているカウブックスを始めるとき目の玉が飛び出るような資金を投じてイームズのスツールを揃えたというエピソードが好きだ。「三十年くらい経っても、ひとつも古びることのない、いいものを今の内に買っておこう。商売はきっと大変だろうから、後になって買いたくても買えないからね」。その美しく経年変化を遂げたスツールに座って手にとった本をじっくりと眺め、今日はどの本を連れて帰ろうかと悩んでいるときが僕にとっての至福の時間だ。今の悩みの種はピーター・ビアードの「Diary」という写真集が欲しくてたまらないこと。なかなか簡単に買える金額ではないのだが。また近々眺めに行ってこよう。