僕の体内に擦り込まれた味『ムルギー』のカレー

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ひたすらカレーのことだけをアップしている「カレー細胞」というブログがあるのだが、タイトルが秀逸だなぁと感心させられる。カレー好きというのは元々そういう遺伝子が体内に組み込まれているのかと思えるくらい飽きもせず食べ続けられるからだ。一番好きな食べ物を尋ねられたら迷わず「カレー」と答える。

ムルギーとの出会い

最初に食べたカレーは(誰でもそうだと思うが)家庭の味とも言える母親の手作りカレー。その次に僕の記憶と体内にいわば擦り込まれているのが渋谷『ムルギー』のカレーだ。初めて食べたのが中学生の頃だから、かれこれウン十年以上通って食べ続けている。まさかこんなに長い付き合いになるとは思わなかった。当初は先代のご夫婦が店を切り盛りしていた。厨房担当が奥さんのほう、ご主人がいつもオーダーを聞きに来るのだがこちらが何も言わないうちにボソボソと「ムルギー玉子入りね」と言われるもんだからそのメニューしか食べたことがない。今はたぶん娘さんが後を継いで、昭和26年創業の伝統と味を守り続けている。最近では同じ百軒店にある名曲喫茶ライオンなんかと一緒にメディアに取り上げられることも多く渋谷の伝説みたいな扱いになっているのが長年の常連からすると複雑な心境だが、でもそういう人気が店を存続させているわけだから良しとしなければ。

ムルギーの流儀

ムルギー名物といえば“エベレスト盛り”とか“ムルギー山脈”などと形容されるそびえ立つライスの盛り付け。この山を少しずつ崩しながらカレーと混ぜてチビチビ食べていくのが流儀。黒っぽいルーは見た目よりサラッとしていて一口食べるとやや甘く感じるが13種類の複雑なスパイスの辛みが後から追いかけてきて時間差で鶏肉の旨みが広がる。ちなみにムルギーとはヒンドゥー語でひな鳥の意味。ルーツは先代がミャンマーのインド料理店で出会ったレシピということらしいが詳しいことは不明。

お皿の脇に添えられている手作りのチャツネも昔から変わらず。これをカレーに混ぜるとフルーティになってまた違った味を楽しめる。僕はこのチャツネが好きすぎて必ず追加する。


メニューはこんな感じ。基本は「玉子入りムルギー」を辛口で+玉子増しオプション。

現在の営業スタイルはランチの3時間半のみなのでいつもこんな感じに満員で賑わっている。最近は特に女性率高し。今と違ってBGMもなく静かでがらんとしていた昔とは違う印象だが、店内のレイアウトや雰囲気は基本的にずっと変わっていない。

僕にとって『ムルギー』のカレーというのはもはやカレーではなく“ムルギー”という食べ物だ。この味が食べられる限りこれからも通い続けるだろう。もしまだならぜひ一度体験してみてほしい。ちなみに金曜日は定休日なのでご注意を。