『Photographers in NEW YORK』

Movie

ニューヨークのストリートでファッションスナップを撮り続けた伝説の写真家ビル・カニンガム氏が6月25日に87年の生涯を閉じた。

The New York Times紙の名物ファッションコラム「ON THE STREET」を50年以上に渡り担当していたカニンガムは、大女優だろうがセレブだろうが一般市民だろうが全く分け隔てなく自分が興味を抱いたファッションの対象だけをひたすら撮り続けた。誰にも口出しさせないために無報酬を貫き、パーティーの撮影では中立性を保つためどれだけ勧めらても水1杯すら口にしないなど彼の仕事への姿勢や行動は常に一貫していた。2011年に公開されたドキュメンタリー映画「ビル・カニンガム&ニューヨーク」はとにかく素晴らしい作品で、カニンガムのストイックな生き様、ファッションに対する誠実さ、彼が人々からどれほど尊敬され愛されていたか、そしてニューヨークという街自体の被写体としての魅力など何度観ても新たな発見がある。もしまだ観ていないという方、NETFLIXで視聴可能なのでぜひ。ニューヨークのストリートにカニンガムがいないことの喪失感さえも実感することになるはずだ。

本題に入ろう。いま一番楽しみにしている映画が8月に公開される『Photographers in NEW YORK』、ニューヨークで活動する新旧15人の写真家たちを記録したドキュメンタリー作品だ。個人的に最も興味があるのはリッキー・パウエル氏。ビースティ・ボーイズのツアー写真やプライベートショットを撮影し始めた1980年代後半から活動をスタート、ポップアートの旗手アンディ・ウォーホルやグラフィティアートの先駆けキース・ヘリングを被写体に作品を発表するなどストーリーカルチャーやヒップホップの分野に大きな影響を与えた。カニンガムとは作風は異なるが両者の共通点はニューヨークのストリートを撮り続けたこと。いずれにしろ世界中から最先端のファッションとカルチャーが集結し、様々なアクセントの言葉が飛び交う世界の縮図とも言えるニューヨークという街ほどフォトグラファーを魅了し夢中にさせる場所は他にないということなのだろう。