時代の先を行き過ぎたセイコー腕時計型デバイスが教えてくれること

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あれだけ話題となったアップルウォッチ然りスマートウォッチが苦戦している。現状ではスマートフォンの周辺機器という立ち位置から抜け出せていないからだろう。

そもそも腕時計で時間を確認する必然性が以前より圧倒的に少なくなった今、時計に求められているのは機能よりも自分の趣味嗜好を表現するツールだったり宝飾品としての役割だろう。ただし腕時計型のデバイスに可能性が全くないかというと個人的にはそんなことはないと思っている。Apple Payが日本でも普及しアップルウォッチが財布としての機能を持つようになればそれだけでも十分魅力的だし、いろいろなコネクテッドデバイスとシームレスに繋がってリモートコントロールのハブとして使える可能性だってある。アップルウォッチの次世代がもし単独でセルラー接続できるようになれば、iPhoneのアクセサリではなくiPhoneなしで使えるデバイスとして新たな役割も担えるだろう。手元のアップルウォッチを眺めながらそんなことを考えていたら、大昔に購入した腕時計型デバイスのことを懐かしく思い出したので久しぶりに引っ張り出してみた。

Ruputer(ラピュータ)

1998年に発売された世界初のウェアラブルPC。16bitCPUと2MBメモリ搭載、単体でPDAとしての機能を持つほかWindowsパソコンと接続可能。開発環境がオープンだったDOSベースの独自OSは徹底した省電力設計のためボタン電池2個で4ヶ月使用できた。


WRISTOMO(リストモ)

2003年にNTTドコモから発売された腕時計型のPHS。腕に装着したままイヤホンマイクで通話できるほかディスプレイ上下のリリースボタンで普通のストレート型携帯のような通話スタイルにできるのが特徴。特設サイトで発売された初回分の1000台はわずか10分で完売するほど注目された。



両方ともセイコーインスツルメンツ(現セイコーインスツル)の製品。我が日本にはアップルよりずっと前に腕時計の形をしたこんな面白いガジェットを真面目に開発していたメーカーがあったのだ。お世辞にも実用的であったとは言えないし、時代の先を行き過ぎてごく一部のマニア(オタク?)にしか受け入れられなかった製品かもしれない。でもこれを腕に付けただけでワクワクしたのを今でもはっきりと覚えている。漠然としてはいたけれど何か未来がやってきたみたいな感覚だった。腕時計で電話がかけられたりメールの送受信ができるなんて当時はもうそれだけでSFの世界が実現したかのよう。だからとにかく欲しいと思い飛びつき熱中したのだ。そう、あの伝説のプレゼンでジョブズがiPhoneを発表した時に誰しもが感じたこの新しいデバイスは今までの生活を確実に変えるものになるだろうという予感、期待、興奮。残念ながら今のApple Watchに決定的に欠けているのがその“ワクワク”なんだと思う。そろそろ次の“One More Thing”を期待したい。